離婚後の親子の交流
離婚後も親子、面会し交流する権利は通常認められます
夫婦が離婚をすることで、二人の間の婚姻関係は解消されますが、親と子供の関係は離婚の有無に関わらず一生続いていくものです。未成年の子供、とりわけ年齢の低い子供の場合は、両親の愛情が成長に大きな影響を与えます。一緒に暮らせなくなった親と子が定期的に面会し会うことで、普段一方の親とのみ生活をしている子供の心を不安定にするという考え方もあります。
一方、たとえ生活は別々になっても、子供は父親と母親の両方と接点を持ち、どちらからも愛情を受けられるような環境を確保すべきとの見解もあります。どちらが必ずしも正しいとは言えないまでも、暴力や虐待など、子供の健全な成長を阻害する特別な事情がない場合においては、別居となった親と子供が定期的に会うことは認められています。
これを「面会交流」と言いますが、実施に当たっては親権者を持つ側の監護範囲に立ち入るという影響もあることから、前もって面会交流についての承諾を得ておく必要があります。現実的には、これらを都度取り決めるのは面倒な要素もあるため、面会交流の実施ルールなどを、離婚協議の中で取り決めておくことも行なわれています。
面会交流について決めておきたい内容(具体的に細かく設定)
面会交流は子どもの年齢や感情も考慮に入れた上で、以下のような項目を決めていきます。
- 子供と会う回数や頻度
- 面会交流の時間や宿泊の可否
- 学校行事参加など
- 面会する場所
- どのような形で子供を受け渡すのか
- 費用が発生した時の負担をどうするか
- プレゼントなどの扱い
後々トラブルにならないことを考えると、面会交流については、具体的に決めておいた方が良いことが多数あります。ただし、全てを前もって決めておけない場合の方が多いのも事実です。そのような場合は、面会交流の「頻度」と「場所」くらいの基本事柄を定めておきましょう。
その上で、細かなものについては都度調整したり、例外的な場合については、必ず事前に親権者の承諾を得るという約束を固く結んでおくと良いでしょう。
面会交流を認めないことは可能?
別居することになった側の親が、自分の子供に会う権利を剥奪することは原則的にできません。これは面会交流権として法的に明文化されているわけではありませんが、親であるという事実をもって、子供に会う権利が本質的に備わっているためです。
ただし、例外的に面会交流を制限したり、停止することが認められる場合もあります。例として、以下のような場合が考えられます。
養育している側の親の再婚により、新たな親(継父/継母)を迎えて家族が再構成された時
面会することで、子供が暴力や虐待を受ける危険性がある場合
面会することで、子供が連れ去られる危険性が高い場合
面会することで、子供が精神的にも健康状態を著しく損なう可能性がある場合
別居となった側の親が養育している側の親を不当に非難し、子供が同居親と不仲になるようにもくらんだり、それによって精神的な安定を損なう可能性が高い場合
ルールは口約束ではなく離婚協議書(公正証書)に!
面会交流は、子供の利益を最優先に考慮されて作られているものです。別居するに至った親側の心情に配慮するというよりは、子供の健全な成長にプラスの影響を与えるために設定されています。
よって、面会交流をすることで、子供の成長にマイナスの影響をもたらさないよう、慎重な話し合いと適切なルール作りが大切です。また、話し合いによって取り決めた内容については、必ず離婚協議書などの書面に盛り込むようにし、双方で適切に保管しておきましょう。
書面化していない場合、「子供に会わせるような約束をした覚えはない」と言われてしまえば、それを翻す証拠材料がなくなってしまいます。色々なトラブルがありますが、一例として次のようなものもあります。
- 月に1回の面会約束だったのに、いつの間にか週に1回の面会を求めてくる
- 「約束と違う」と言っても「そんなこと約束していない、証拠はあるのか?」と言われてしまった
- 「僕は3人で一緒に暮らしたいんだよ パパもそう言ってた」と面会交流後に子供が口にするようになった(当初から再婚をもくろみ子供が利用されている)
このようなルールが正しく守られない面会交流であれば、子供の心情も不安定なものとなり、本来の目的から大きく逸脱したものとなります。大人の側の都合や思惑に振り回されていては、子供の健全な成長は望めません。これらを回避し、一定の線引きをして新しい人生を歩んでいくために「離婚」が選択されたはずです。
その道の先に、子供の豊かな未来を確保していくためにも、離婚協議書には話し合いでの約束事項を盛り込み、その範囲内で面会交流が実施されるよう適切に管理していくことが大切です。
話し合いで面会交流の範囲が折り合わない…
面会交流の形について、当事者(離婚を目指す夫婦)の間で話がまとまらない場合があります。時に、一方が面会の設定を完全に拒否しようとする場合もあります。このような場合、家庭裁判所に「面会交流の調停」を申し立てるという手段が考えられます。
離婚自体も同意できいない場合であれば、同じく家庭裁判所にて申し立て可能な「離婚調停」の中で、調停委員が第三者として双方の意見を聞き、離婚の条件の一つとして「面会交流」についても合意が図れるように調整します。調停でも話がまとまらない場合は、家庭裁判所によって、面会交流の可否やその内容について審判がくだされます。
裁判所が考える「面会交流」について
裁判所は、別居している親側が求めている面会交流に関して、子供の福祉に反しない限り実施されなければならないという立場を取ります。よって、相手側が面会交流を求めて調停を申し立てた場合、原則的に面会を認めるという流れになります。
このことから、特殊な事情がない場合においては、子供と暮らす親側は一方的に面会交流を拒否し続けることはできないことを、予め理解しておくことが大切です。
依頼者の希望とお子さまの未来の両方に配慮して…
「親権」をどちらに設定するかということと同様に、別居親側の「面会交流」の範囲設定も慎重に行なうことが肝要です。子供がある程度の年齢に達していると、面会交流は子供の意思に任せる場合も多くなりますが、まだ幼い年齢であるとより一層の配慮が必要になります。
離婚後の両親の関係性によっては、子供に余計な遠慮をさせることもありますが、何より配慮されなければならないのは子供の側であることを両親共に忘れるべきではありません。離婚するには相応の理理由があり、その上で表面上良好な関係を維持することは難しい調整にもなりますが、それが誰のためなのかを考え、協力し合って前向きな「面会交流」を設定しましょう。
また、トラブルを防止するためにも、できるだけ適切な情報を集め、信頼できる弁護士の下で離婚協議書(公正証書)を作成してください。当事務所では、ご依頼者の思いを最大限に汲み取り、経験と実績を元に子供の未来も見据えた最適なアドバイスをさせていただきます。
共に悩み、粘り強く交渉もいたしますので、ご遠慮なく相談ください。