DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
「家庭内暴力」深刻になれば命の危険性も…離婚は早期決断!ただし慎重な準備を!!
家庭内暴力が行なわれているような場合、何よりも身の安全を確保するよう努めましょう。まず、「相手に居場所を知られない別居」が不可欠です。DVの加害者は、離婚を切り出されると、多くは逆上してさらに暴力を振るいます。また別居先を把握されてしまうと、押しかけて暴力的に連れ戻そうともします。
よって、絶対に居場所を知られないように慎重に別居先を確保しましょう。「安全確保」ができてから、次に考えるのは「証拠」です。調停や裁判で離婚を求めることが多くなりますが、この際、客観的な証拠が必要とされます。
DVを受けた際にできた傷や怪我、医師の診断書、その部位の写真、DVの状況メモや日記、会話の録音などを証拠として残しておくことを心がけてください。
離婚原因として認められる暴力・DVとは?
ドメスティックバイオレンス(DV)は、直訳で家庭内暴力のことを指します。裁判では、肉体的なものだけでなく、精神的な暴力や虐待も広く離婚原因の中の一部として扱われます。
肉体的暴力
殴ったり蹴ったりすることで身体に傷や怪我を負わせる行為、また物を投げつけたりすること。
心理的、精神的暴力
悪口、暴力、罵倒、辱めたり、罪悪感を抱かせる発言を行なうこと。
社会的な隔離(孤立化)
部屋に閉じ込める、外部から遮断する、携帯電話やパソコンなどを取り上げて外部との繋がりを持てなくするなどの社会的な隔離を行なうこと。
脅迫、強要、威嚇
言動や態度で威圧して怯えさせ物事を強要する、大切にしているものを壊したり、子供やペットを虐待するなどの脅しを利用して物事を命じる、違法行為を強要するなど。
性的暴力
相手の気持ちを無視した性交の強要、避妊への非協力など。
経済的暴力
生活費を渡さない、収入を知らせない、家計を厳重に管理、働きに出ることを禁止など。
子供を利用した暴力
子供に暴力的な発言をさせたり、子供の前で誹謗中傷しすることで、親の威厳を損なわせるなど。
モラル・ハラスメントとは?
言葉や態度で精神的にいじめること
モラル・ハラスメント(モラハラ)とは、直接的な身体暴力ではなく、言葉や態度を介して行なわれる「精神的な暴力」のことです。ハラスメントとは嫌がらせの意味であることから、平たく考えるのであれば、言葉や態度で「精神的な嫌がらせ」をすることを意味します。
長期的に行なわれ常態化していることも多く、被害者側は「自分はなんてダメな妻(夫)なんだ」と思い込まされているケースが多くみられます。元々、職場の問題としてクローズアップされてきましたが、昨今では離婚原因としても急増しています。
モラハラや精神的DVを軽んじてはいけません!
「モラハラ」の加害者は、自分は正しいことを言っていて非は全くないと信じているため、被害者側もこの傾向に取り込まれ、モラハラを受けながら「自分はダメな人間だ」と巧妙に思い込まされていきます。結果として、誰にも相談できず、精神的に追い詰められていき、倦怠感や不眠などの機能障害の影響が出始めることもあります。
そして、次第に胃潰瘍、大腸炎、目まい、皮膚病など、具体的な病の症状として身体に影響が出始めます。また、精神面の影響で慢性的な抑鬱状態となり、自殺に追い込まれる可能性もあります。このように、DVと同様、モラハラは婚姻生活に深刻な影響をもたらす場合もありますので、一人で悩まずに身近な人に相談する習慣を持つことが大切です。
モラハラの具体例
- 「養ってやっている」と言って、自分を優位に相手を下位に貶める
- 褒めることはせず、失敗やミスを必要以上に取り上げて「馬鹿だ、ダメだ」と否定する
- 言葉にせず、ため息や舌打ちで不満を持たされていることを常にアピールする
- 常に「後出し」で何をしても否定される
- 人前で笑い者にする(人前では言い返しにくいことを利用して否定する)
- 外出などの行動に制限を加える
- なかなか生活費を渡さないことで経済的な制限を常に与え、自分を優位にする
- 日常生活の嫌な出来事を全て妻(夫)のせいにする
「モラハラ」はモラル的に考えておかしいと思わせる嫌がらせであることから、厳密にどこからどこまでがモラハラと言うことは困難です。また人により感じ方も異なるため、特に加害者側に対して、それがモラハラであり相手を傷つけていることを理解させることが容易ではありません。
また、モラハラを行なう側は、頭の回転が早く、口が立つ場合も多く、常に自分が優位な立場でありたがる傾向もあります。自分は絶対に正しいと思い込んでいる側面もあり、相手の過ちを正してあげているという考えに至りがちです。このためモラハラを訴えても、その発言や態度の契機となった相手側のミスや過ちをうまく説明しながら反論します。
それは「ただの売り言葉に買い言葉で、日常的にも些細な夫婦喧嘩に過ぎない」と反論されることもあります。何よりも物理的な暴力を伴わないのが特徴なので、証拠を提示しにくく、モラハラをうまく立証することは容易ではありません。
「何をどのようにされたか」「どのような状況下で行なわれたか」「それによりどうなったか」など、事実を具体的に都度記録し整理しておくことが重要になってきます。
離婚を考えるなら…事前準備のポイント
別居が先決
DVをする夫は一般的に、自分が離婚の原因を作っていることを全く自覚していません。このため離婚協議(話し合い)を行なおうとしても、まず応じないケースがほとんどだと考えられます。
また離婚という言葉を持ち出した段階で逆上し、暴力がエスカレートすることも十分に考えられます。このため、離婚を考えているのであれば、まず別居先を確保することが先決です。
この際、相手方に別居先を知られてしまっては意味がありません。よって、実家を選択することは避けた方が賢明です。各都道府県、各地域には、「配偶者暴力相談支援センター」等の相談機関があり、連絡先も簡単にインターネットのキーワード検索で調べることができます。
このような機関に連絡すれば、一時的な避難場所や施設、シェルターについての情報を提供してもらうことができます。まずは、DV相手に知られないような形で、別居先を確保しましょう。
証拠収集は離婚を勝ち取る上で重要! 見つからないように慎重に
別居後、話し合いで離婚をまとめようとする「離婚協議」は難航することが予想されます。よって、当人同士の話し合いは早めに切り上げ、家庭裁判所に「調停」を申し立てると良いでしょう。
調停を申し立てると調停委員という第三者が二人の間に入り、申立人の離婚希望を調整してくれます。この際、DVの証拠を用意しておきましょう。調停では相手が拒否し続けた場合、離婚を成立させることができませんが、その後の裁判においては、相手の思いにかからわず、判決として離婚を勝ち取ることも不可能ではありません。
いずれも、以下のような証拠が離婚を勝ち取るために重要になりますので、DVで離婚を意識し始めたその時から、証拠の収集に努めてください。
- DVで受けた傷や怪我の写真、またその時受診した医師の診断書
- DVの内容や状況を記した日記や記録
- 近所や周りの証言
- DVが行なわれている時やその前後の録音
- 警察などの公的機関や相談機関の記録
第三者への相談
離婚に向けた手続きとしては、「離婚協議(当事者間話し合い)」→「離婚調停(第三者仲介での話し合い)」→「離婚裁判(裁判で離婚請求)」というプロセスになります。
これらは当然一人で行なうことが困難であり、DVの拡大リスクも伴いますので、弁護士含め各専門機関とうまく連携して進めていくことが大切です。例えば、別居するにあたり子供をどうするかといった問題がある場合や、子供が虐待を受けているような場合は、地域の児童相談所にも連絡しましょう。
公的な支援ですので、費用負担などはありません。また、専業主婦であるために別居するにも実家以外に手がない場合など、お住いの市区町村の役場の生活保護課に相談するという手もあります。
裁判所にて「保護命令申立」の検討中である旨を伝えれば、生活保護費などの受給でも柔軟かつ迅速に対応してくれます。結果として、DV加害者に場所などを知られることなく、別居先の費用を工面することも可能となります。なお、別居中も夫婦という枠組みは存続していることから、生活費として婚姻費用を請求することも可能です。このような様々な情報も、一人で悩んでいるだけでは得ることができない情報です。
まずは、専門家である弁護士や地域の配偶者暴力相談支援センターなどに相談することを強くお勧めします。また、暴力が深刻なレベルにある場合については、近所の体裁などは捨てて、自らの命を最優先に考え、警察にも連絡しましょう。
一人で悩まずにご相談を!
DVやモラハラを受けている女性の多くは、逆上していない冷静な時の夫が本来の姿だと信じています。特にお酒が入ることで変化が起こる場合は「お酒が入るとウチの旦那は…」と思うものの、「悪いのはお酒であり夫(彼)自体に罪はない、冷めればまた戻るから我慢するしかない」と思いがちです。
「本来は優しい夫だし、その夫を選んだのは私なんだから…」と自分の方に非があると捉える傾向もあります。また、子供が加わることで逃げるという選択肢が見出しにくく、それがこの問題をより深刻化させていきます。結果として無力感を引き起こし、今ある暴力からの解放を諦めてしまいます。一人で全てを背負わずに、相談することが大切です。誰かに相談することで解決の糸口が見いだせる場合があります。
客観的な判断が大切になりますので、一人で悩まずに、弁護士などにご相談ください。