養育費とは?
離婚した後の子育てに要するもの
離婚後、親権を獲得した側の親はその子供を育てていく権利と義務を有しています。一人で子供を育てていくことは容易ではないため、一般的には親権者とならなかった側の親から「養育費」を受け取るような形で、子育てについてのサポートを得ます。
ただし、これは子供を養育するための費用となるため、シングルマザー(もしくはシングルファーザー)の生活を支援するものではありません。あくまでも子供の養育についての費用であるという点で理解しておく必要があります。
それでは「養育費」の養育とは、果たしてどこからどこまでを指すのでしょうか。また養育費が支払われる期間については、いつまでとされるのでしょうか。以下では養育費の中身や期間、支払いの請求などについて解説します。
養育費の範囲
一般的には、次に挙げるようなものが「養育費」に含まれます。
- 子供の衣食住に必要な費用
- 子供の教育費(成人or大学などの教育機関卒業までの教育費)
- 子供の医療に関わる費用
- 文化、娯楽費
- その他、子供が自立した社会人となるまでに要する費用
それぞれの費用は個々の生活レベルによって異なってきます。一般的には、離婚前の水準をベースに同等レベルの生活水準を維持できる養育費が妥当とされます。また教育費についてですが、成人としての二十歳までとする場合や高学歴化の影響もあり、大学等の卒業までの必要部分を教育費とする場合もあります。
養育費の金額
どんな基準で養育費は設定される?
「離婚した時点から子供が成人するまで」が一般的となっている養育費の金額は、どのように設定されるのでしょうか。通常、二人の年収や財産などをベースにして「月額いくら」という形で求められます。
ですが、例えば小学校に入ったばかりの子供が、そこから約15年間でかかる養育費を総額いくらと計算するのは本来できるものでもありません。このような場合のために、家庭裁判所が基準にしているのが「養育費算定表」です。
年収と子供の数、年齢別に標準的な養育費が一覧になっています。例えば、年収500万の夫、年収100万の妻、小学生1人の養育費の目安であれば、月額4万円から6万円とされています。
養育費が支払われる期間
いつまでを養育費の支払い期間とするのか?
基本的には成人(二十歳)するまで
一般的には、成人すると社会人というイメージががあり、これに基づいて二十歳までを養育費の相当期間とすることが多いようです。しかし、例えば高校を卒業してすぐに職に就き、二十歳を迎える頃に完全に自立していることは昨今ではあまり考えられません。
両親などの学歴も含めて考えられますが、大学教育やその他の高等教育を受けるだろうと想定されるような場合、その教育機関の卒業までの間養育費を受け取る場合もあります。
金額や支払い期間などの途中変更はできないのか?
通常は子供が成人するまで支払われる養育費ですが、子供の成長にしたがい、進路を変更したり想定外の病にかかることも考えられます。また双方の親についても、支払う側の失業や、受け取る側の再婚など、現実的に経済事情に変化が生じる場合もあります。
このような際に、金額や期間の変更が妥当だと思われるような場合は、再度話し合いで変更することも可能です。また、この変更希望に対し、一方が断固応じないような場合は、家庭裁判所で調停や裁判を起こして決めることもあります。なお、できるだけこのような再設定を行なわないために、離婚時の話し合い段階で想定しうる養育費の変更ルールなどを「離婚協議書」に予め盛り込むような場合もあります。
約束の養育費が支払われない時の対処法
確実に養育費を受け取るためのポイント(公正証書)
離婚時点で養育費について双方が合意していた場合でも、現実的に養育費が滞るようなことも考えられます。このような時、仮に養育費の内容を覚書き程度の簡単な文書でまとめていた場合、不足している養育費を請求するにはわざわざ家庭裁判所で調停や裁判を行なわなければなりません。
しかし、以下に説明しているような公正証書や調停証書を作成しておけば、わざわざ家庭裁判所に行かなくても、直ちに給与や財産を差し押さえて強制的に養育費を回収することができます。
公正証書
離婚の話し合いをする中で、養育費など決めるべき項目について合意ができた場合は、「公証役場」に行きその合意内容を「公正証書」の形にしておくことをお勧めします。この「公正証書」は、裁判をして判決を得たのと同じような効力があるため、例えば養育費が支払われなかった場合は、この「公正証書」に基づいて強制的な養育費の回収が直ちに可能となります。
調停証書
養育費の支払いが、調停を経由して定められた場合(当事者間の話し合いでは決着がつかず、家庭裁判所で調停を申し立てて調停委員を通じ折り合えた場合)については、調停調書が作成されることになります。もし相手が養育費を支払わなかった場合は、この調停調書によって、裁判所の職員が相手に対し養育費を支払うよう履行勧告(約束を実行するように促すこと)してくれます。
この履行勧告で応じないような場合は、公正証書の時と同じく、相手の財産や給与を差し押さえて、強制的に養育費を回収することができます。
強制執行の対象になるもの
- 給与(会社員)や売り上げ(自営業や個人事業主)
- 預貯金、株券など
- 自動車、家電、家財道具
- 貴金属や骨董品
- 所有する土地や建物
- 国債などの金融商品
養育費は子供の未来を守るもの、必要がある時は変更協議を!
子供の年齢にもよりますが、離婚してから養育費の支払いが完全に終わるまでには、長い歳月があります。初めから最後まで支払われることが前提の養育費ですが、現実的には様々な理由で養育費が受け取れないという事態が起こります。経済事情の変化や生活環境の変化は起こり得るため、必要に応じ養育費は再度話し合う必要が出てくる場合もあります。
ただし、協議もなく一方的に支払いを終わらせたり、度々個人的な理由で支払いが遅れるようなことは許容されるべきではありません。例えば、子供が生まれたり、再婚したりといった環境変化、あるいは失業など経済事情に決定的な変化が生じた場合は、再度話し合うことで養育費の中身を変更し同意し合うことが必要です。
このようなルールについて双方が了解していないために、受け取れるはずの養育費が受け取れずに苦労を強いられたり、いつまでも同額の養育費を自分の絶対的な義務として支払い続けているような場合もあります。
わからないときは弁護士などに相談しましょう。無料相談だけでも解決につながる道が見つかるかもしれません。