最終手段としての離婚訴訟
離婚協議、離婚調停を経て、最後に考える「裁判離婚」
日本では制度上、離婚調停を行なってからでないと、離婚訴訟を行なえなくなっています。
最初に行なわれるのが当事者間による話し合いとしての「離婚協議」、これで不成立の場合、第三者的視点を取り入れた「離婚調停」、これでも離婚に達しない場合、最終的に残された手段として「離婚裁判」を行なうというプロセスになります。
裁判まで起こすのは全体の1~2%ほどとされ、精神的にも経済的にもその負担は大きなものとなります。このような場合、弁護士のサポートが不可欠なものとなります。
離婚訴訟を起こすには、民法規定の「離婚原因」が必要
離婚の原因となるものはそれぞれ異なりますが、裁判離婚に関しては、民法で規定される「法定離婚原因」が必要となります。また、自ら婚姻関係を破綻させた有責配偶者(不倫などの不法行為を行なった者)からの離婚請求は、原則として認められません。
裁判離婚の特徴
相手の意思に関わらず、判決で離婚が可能!
離婚調停で離婚が不成立に終わってしまった場合、不服申し立てができないことから、どうしても離婚したい場合については、裁判を起こし判決として離婚を勝ち取る方法を検討せざるを得ません。
離婚訴訟を提起するには、離婚を求める「訴状」に加え「原因を明記した文書」を提出します。これらの文書は離婚調停の申立書のように予め雛形が用意されているわけではありません。
だからといって自由に記述できる類のものでもなく、むしろ法的な規定に沿う形で必要事項を記入します。このため、通常は弁護士に依頼するのが一般的です。
訴状を提出し受理されると、10日前後で初回の口頭弁論期日呼び出し状が届きます。訴状提出後、1ヶ月程度の期日が設定され、それ以後は概ね月に1度のペースで当事者のそれぞれが主張や立証を尽くすことになります。離婚裁判の最大の特徴は、離婚できるかできないかの判断を裁判官に委ねるというものです。
つまり、離婚協議や離婚調停のように、一方が拒んで不成立となる性質のものではなく、裁判官が法的な離婚原因(法定離婚事由)を認めた場合には、一方の意思に関わらず離婚が成立することになります。このことから、離婚裁判においては、法定離婚事由の有無と立証が一番の争点になります。
どうしても離婚したいと思っているその理由が法的な離婚原因に合致しているかどうかについては、弁護士に相談されることである程度の判断が可能となります。離婚裁判においては、訴訟の途中段階で裁判官が和解を勧めてくれることもあります。双方が同意できるのであれば、和解調書を作成して離婚が成立します。この裁判官の和解の勧めに関しては、必ずしも応じる必要はありませんが、弁護士と相談し慎重に判断することが望まれます。
裁判離婚の手続きとプロセス
調停離婚で不成立が大前提
当事者間で協議が整わない段階で、いきなり裁判には持ち込めないのが日本の離婚についての法的な手順となっています(調停前置主義)。
よって、相手が予め調停には出頭しないと主張しているような場合であっても、このルールに沿って一旦調停を申し立て、離婚調停不成立という事実を経る必要があります。
離婚訴訟の申し立て(管轄の家庭裁判所)
夫、あるいは妻の住所地を管轄する家庭裁判所において、訴状を提出することで訴えを提起することができます。
離婚の原因となるところについて、法的にも合致するものを明確に記載しておかなければなりません。これにはある程度法的な知識が必要になりますので、弁護士に相談することが肝要です。
第1回口頭弁論期日呼出状の通知(郵送にて受理)
離婚裁判の訴えが認められると、裁判所が第1回口頭弁論期日を指定し、呼出状が送付されます。
これは訴えを起こした原告側に対してだけでなく、当然のことながら相手側(被告)にも届けられます。また被告に対しては、訴訟内容が確認できるように、訴状の副本も併せて郵送されます。
裁判の開始(第1回口頭弁論)
初回の口頭弁論が約1ヶ月後に行なわれ、原告作成の「訴状」と被告作成の「答弁書」の内容が確認され問題点が整理されます(このように事実を明確にする行為を「審理」と言います)。
双方に反論がある場合に「準備書面」にまとめる形で提出するように指導されます。2回目以降の口頭弁論は、月に1度のペースで行なわれることになります。審理は概ね以下のようなプロセスで進みます。
審理の流れ
争点についての整理
原告、被告が作成してきた「準備書面」も確認され、食い違いや争点がどこにあるのかの整理が行なわれます。
訴えを起こした原告からの証拠の提出
争点となってくる事実を確認するため、原告側に証拠の提出が求めらます。
原告の提出した証拠と両者の主張で離婚原因を有無を検証
双方への尋問や証拠を元に、原告が主張する離婚原因の有無(例えば本当に不倫行為があったのか等)を裁判官が判断します。裁判官が判断できるまで、あるいは双方の主張するところについて裁判官が納得ができるまで審理は続き、判断ができた段階で終了します。
裁判の終了 パターン1(和解)
双方が話し合いで解決しようという結論に至った時、あるいは裁判官が話し合いで解決すべきと判断した時(尋問前や尋問後など)、裁判官が和解を勧告する場合があります。
この和解案に合意すれば、和解調書が作成されると同時に離婚が成立します。和解が成立した場合は、和解の確定後10日以内に「離婚届(相手方の署名押印は不要)」に「和解調書謄本」と「戸籍謄本(本籍地でない役所に出す場合)」を添えたものを市区町村役場に提出します。
裁判官の和解勧告に応じるかどうかは自由ですが、和解勧告には重要な意味が含まれます。弁護士とも話し合いながら、慎重な判断をしてください。
裁判の終了 パターン2(判決)
尋問が終わり、1ヶ月から3ヶ月程で、親権や慰謝料なども含めて総合的な判断がなされ、離婚容認の可否が判決として出されます。この判決に対し2週間の控訴期間(不服を申し立てる期間)が用意され、控訴もなく2週間が経過した段階で判決が確定します。
離婚容認との判決が出され、2週間後に判決が確定した場合、10日以内に原告は「離婚届」に「判決書謄本」と「判決確定証明書」、「戸籍謄本(本籍地でない役所に出す場合)」を添えたものを市区町村の役場に提出します。
なお、離婚届の署名押印は、本人のみのもので問題なく受理されます。
離婚裁判になりそうな案件は、必ず弁護士にご依頼を!
離婚訴訟に関しては、法律の専門知識を持たない一般の方が全てをご自身で行なうのは非常に困難なものです。訴状の作成段階で法律の知識も必要となりますので、できる限り早い段階で弁護士に依頼することをお勧めします。
裁判は、民事訴訟法の手続きに即して行なわれます。また、判決を得るまでの過程で離婚原因を主張し正しく立証しなければなりません。弁護士は、依頼人の代理人として裁判所に出頭することが可能で、弁護士の出頭があれば、訴えを起こした原告は「和解の話し合い」や「証拠調べ(尋問)」の時以外、裁判所に出頭しなくても問題ありません。
弁護士のサポートを受けるのが一般的になりますので、離婚裁判は弁護士前提で戦略をねることが大切です。