夫婦の間で離婚合意できる時、離婚の理由は必要ない
結婚を決めた時と同様に、離婚も夫婦の合意で成立させるのが通常です。話し合いをする中でお互いが離婚に承諾できれば、離婚に明確な理由は必要なく、離婚届に必要事項を記入して市区町村役場に離婚届を提出します。
「離婚届」については、協議離婚(=話し合いで決めた離婚)の箇所にチェックを入れて、それぞれが署名押印し、子供がいる場合は親権者を記入します。手続きのみについて言えばこれのみで、離婚届が役場で受理されれば離婚は成立します。ただし、離婚を急いで「財産をどう分けるか」「婚姻期間中に納めていた年金はどうするのか」「別居となる側の親が子供と会う時のルールをどうするか」などが未決定であったり、簡単に口約束で済ませてしまうと、後でトラブルのもとになります。
事務手続き上、成立自体は簡単な離婚ですが、成立後に後で微調整を加えるのは色んな意味で面倒な作業となります。決めるべきことを慎重に話し合い、双方が納得できるレベルで折り合えた段階で、その内容を「離婚協議書」に残してください。その上で離婚届を提出して離婚するようにすることが肝心です。
裁判での離婚手続きには「法定離婚原因」が必要
夫婦が共に合意できて離婚となることが本来ですが、一方がどうしても離婚に応じない場合も考えられます。そのような場合には次のステップとして、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てることになります。
これは第三者としての「調停委員」男女1名ずつが仲介役として話し合いに加わり、双方が折り合えるような形で離婚成立を調整します。不仲となっている場合も当然考えられますので、夫婦が別々に調停委員と話をできるように配慮もされます。
この離婚調停において成立するのが「調停離婚」ですが、依然として合意がなされないような場合には、同じく家庭裁判所で離婚訴訟を申し立て、裁判の判決で離婚を勝ち取ることを目指します。
ただし、訴訟を起こす場合については「法定離婚原因」と言われる客観的な離婚原因が必要となります。
「法定離婚原因」に該当する5つ
- 不貞行為(相手の浮気や不倫等)
- 悪意の遺棄(互いに助け合うという扶助義務を怠ることや生活費を入れない等)
- 配偶者の3年以上の生死不明(死んでるのか生きてるのかも確認できない状態の継続)
- 強度の精神疾患で回復の見込みがない場合
- その他、婚姻生活の継続が困難になるような重大な事由が認められる場合
不貞行為があった場合
結婚が成立した時点で、夫婦は共に「貞操義務」を持つことになります。これは、配偶者以外の相手と性的関係になってはならないとするもので、これに違反する浮気や不倫などを「不貞行為」と言います。不貞行為を離婚事由として慰謝料の請求をする場合については、相手の特定と共にその不貞行為の客観的な証拠が必要になります。
メールのやり取りや手をつないでいるような写真だけでは証拠として性的関係を立証し得ないため、「ホテルに出入りする写真や動画」レベルの証拠を獲得する必要があります。このため、探偵などに浮気調査を依頼する場合もありますが、高額な費用を必要とすることが多いです。
悪意の遺棄をされた場合
夫婦には協力してお互い助け合うという「扶助義務」があります。この扶助義務に反するものがここでの「遺棄」に該当し、「悪意」が指すものとしては、故意や過失、つまりそうすることでどうなるかが予見できるのにそれを行なう状態を意味します。
具体的には「勝手に家を出て行って別居する(生活に困ることが予見できる)」、「精神的に追い詰めて家を追い出す(助け合う行為と真逆の行為を意識的に行なっている)」「財産があるわけでもなく健康状態に問題もないのに働こうとしない(配偶者が生活に困るのは目に見えている)」などが挙げられます。
このように「遺棄」に当たる行為に「悪意」が伴ったものを指すので、出産や病気療養のため実家に帰ったり、仕事で単身赴任や長期出張に出るなど、正当な理由を伴っていれば「悪意の遺棄」には該当しません。
生死不明が3年以上続いた場合
配偶者の消息不明、蒸発、行方不明。このような状態で3年以上経過したものについては、離婚事由として認められます。行方不明の中には、病気の発症や事件に巻き込まれたようなケースも想定されますが、愛人や不倫相手との駆け落ちなどが背景にある場合が多くなります。
この「3年以上の生死不明」を離婚事由にする場合には、探そうとしていた事実も必要となるため、具体的には警察に捜索願を出し、それが受理されていることを証明する「捜索願受理証明」が求められます。
回復が見込めない強度の精神病になっている場合
配偶者が病気になった場合には、一方はそれを助け、夫婦で協力しながら結婚生活を継続すべきとされます。ただし、病が重度の精神疾患、統合失調症、躁鬱病、認知症などの場合には、一方の生活にかかる負担が極めて大きなものとなるのも事実です。
このような場合、一方的に過度の負担を強いる状態を、離婚を生じさせる「離婚事由」として認めるべきと判断されることもあります。ただし、病の程度や症状を評価し「婚姻継続が相当」として離婚を認めないケースもあります。
また、認知症などの病を患う場合においては「離婚をする、しない」の本人判断が困難なケースもあります。このような場合は、離婚裁判を行なう前に「成年後見人」を申し立て、本人に代わり適切な判断を行なう者の選定が必要な場合もあります。
その他、婚姻を続けるのが難しい重大な事由がある場合
婚姻を継続できない理由は、上記の4つ以外にも様々なものが考えられます。全てを一括りにして4種類のみに集約し、それをルールとして規定することは困難なため、裁判所は申し立てられた個々の案件をその都度判断します。ただし、上記4種に該当しない場合、裁判官個人の考え方が大きく影響することもありますので、予め理解しておく必要があります。